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極限

数学の中には「極限」という概念が存在します。

特に関数 \(f(x)\) に対して、定義されていない範囲の値を代入したときにどのような値を取るのか解析する際に役に立ちます。

確かに定義されていない範囲の値を代入しても関数は値を返してくれることはありません。

事実、次のような関数を考えてみました。

\[ f(x) = \frac{\sin x}{x} \]

これは分母に \(x\) があることからも分かる通り、\(x = 0\) を代入することはできません。

つまり \(x = 0\) は定義されていない関数ということです。

しかし関数 \(f(x)\) のグラフを描いてみると、どうでしょうか。

サイン波に関する極限公式のグラフ

\(x = 0\) における値は求めることができないにしても、\(x = 0\) 付近の値なら求めることはできそうではないでしょうか。

目に見えて、なんとなく1と言っても良さそうな気がします。

実際に \(x = 0.00001\) における計算結果を示しましょう。

\[ f(0.00001) = 0.999999999983333 \simeq 1 \]

やはり1に近い数値が得られます。

とは言え、数学的に扱うにあたって、「なんとなく」とか「だいたい」といった曖昧な表現はなるべく避けたいところ。

そこで利用するのが極限の概念になります。

極限

一般的に極限による計算は次のように表現されます。

式(1)

\[ \lim_{~ \xi \rightarrow \alpha} a(\xi) \]

\(a(\xi)\) は変数 \(\xi\) に依存する何らかの量です。

何らかの量とは、数列の一般項や関数がそれに相当します。

式(1)の計算結果が \(A\) になるとしましょう。

式(2)

\[ \lim_{~ \xi \rightarrow \alpha} a(\xi) = A \]

初めに式(2)に現れる記号の説明をすることにします。

\(\lim\) は極限の操作を行うことを表す記号になります。

その下側にある \(\xi \rightarrow \alpha\) は変数 \(\xi\) を \(\alpha\) に限りなく近づけることを表しています。

これらをセットにしてどのような極限の操作を行うのか記述します。

実は式(2)以外の表現もあり、次のようにすることも可能です。

式(2)'

\[ a(\xi) \rightarrow A ~~~ (\xi \rightarrow \alpha) \]

当サイトでも、式(2)と式(2)'の両方を利用しています。

その際は矢印が示すとおりの操作を行っていると解釈してください。

続いて、式(2)における右辺 \(A\) ですが、これは極限操作を行ったことによって得られるを表現します。

これには特別な名称が与えられており、極限値と呼びます。

ここで注意したいことがあって、極限の計算によって値が得られることを当然のことと考えてはいけ無いことです。

極限の操作 \(\xi \rightarrow \alpha\) によって変数を目的の値に変化させていくと、\(a(\xi)\) はそれに伴って変化していくのですが、得られる結果が具体的な数値である場合と、そうでない場合とがあるのです。

極限操作で \(a(\xi)\) がある値に近づいていく様子を極限値に収束すると表現します。

一方で、ある値に収束しない場合以外にはどのようなことがあるのかというと、多くの場合はとてつもなく大きい数字になることがあり、そういった状況を発散すると表現します。

ところで、この「とてつもなく大きな数字」という表現が非常に曖昧なことに気が付きます。

そこで、極限の概念では \(\infty\) という記号を利用して値が大きいことを表現します。

以下でこれらのを利用する具体的な例を示すことにしましょう。

数列 \(\{a_n\}\) の極限

数列 \(\{a_n\}\) を考えます。

\(n\) は1より大きい自然数です。

具体的に一般項は次の通りになっているとします。

\[ a_n = \frac{1}{n} \]

この数列を順番に眺めていって、最終的にどのような数値に収束するか知りたいとします。

つまり得たい結果のは次のようにして計算することができますね。

\[ \lim_{~ n \rightarrow \infty} a_n \]

\(n\) は順番に大きくなっていって最終的に、とてつもなく大きな数値になります。

そのため、\(n \rightarrow \infty\) という操作を行いました。

実際に計算してみるとどうなるでしょうか。

\[ a_n = \frac{1}{n} \rightarrow \frac{1}{\infty} ~~~ (n \rightarrow \infty) \]

そして、\(\frac{1}{\infty}\) は1をとてつもなく大きな数字で割っているという意味なのですが、

前節でも触れたとおり \(\infty\) は記号であり数値ではありません。

そこで、実際に「とてつもなく大きい」何らかの具体的な数値を用意して1を割ってみることにしましょう。

\[ \frac{1}{10000000000000000} = 0.0000000000000001 \simeq 0 \]

するとどうでしょうか。

とてつもなく大きな数字で割られた数というのは、とてつもなく小さい数になるので、それは「ほぼゼロ」とみなせるのです。

関数 \(f(x)\) の極限

冒頭で述べたように、極限は数列の一般項だけではなく関数についても考えることが可能です。

もう一度次の関数に登場してもらいます。

\[ f(x) = \frac{\sin x}{x} \]

先程の数列の例と同様に \(x \rightarrow \infty\) としたときにどのような値が得られるか計算してみましょう。

これには少し特殊な数学テクニックを利用します。

別に関数の極限だからと言うことではありません。

厄介なのは \(\sin x\) なのです。

まず \(\sin x\) がとり得る値の範囲を考えると

\[ -1 \leq \sin x \leq 1 \]

となります。

ここから片々 \(x\) で割れば次のようになります。

\[ -\frac{1}{x} \leq \frac{\sin x}{x} \leq \frac{1}{x} \]

このようにすることで不等式の中間に \(\frac{\sin x}{x} = f(x)\) が出現します。

ここから何を考えるかと言うと、

片々に対して \(x \rightarrow \infty\) の極限を考えます。

\[ \lim_{~ x \rightarrow \infty} \left(-\frac{1}{x}\right) \leq \lim_{~ x \rightarrow \infty} \frac{\sin x}{x} \leq \lim_{~ x \rightarrow \infty} \frac{1}{x} \]

この両端の極限を考えて、もし両方とも同じ値に収束することが分かれば、その間に挟まれている関数の極限も同様に両端と同じ値に収束することが分かるということです。

考えることが増えてしまいましたが、よく見てみるとこれは前節の数列の極限について例に上げた一般項に非常に似ています。

つまり \(n\) を \(x\) に置き換えただけのようです。

そして実際に次に示すように、上記の不等式両端の極限は0に収束します。

\[ \begin{align*} &\lim_{~ x \rightarrow \infty} \left(-\frac{1}{x}\right) = 0 \\[10pt] &\lim_{~ x \rightarrow \infty} \frac{1}{x} = 0 \end{align*} \]

このことから、先述の不等式は次のように表されるので、\(f(x)\) が0に収束することが導けるということになります。

\[ 0 \leq \lim_{~ x \rightarrow \infty} \frac{\sin x}{x} \leq 0 \\[10pt] \Rightarrow \lim_{~ x \rightarrow \infty} \frac{\sin x}{x} = 0 \]

以下に、グラフを示しました。

関数の極限

関数 \(f(x) = \frac{\sin x}{x}\) は \(x \rightarrow \infty\) とすると0に近づいていくことがグラフからもお分かりいただけたかと思います。

任意の点への極限

ここまでに、数列の極限と関数の極限を順次見てきました。

先程の例でも少し触れましたが、これらにはそれほど違いが無いように思えます。

ところが関数を扱う場合には、数列の場合と違って任意の点に近づけるという極限操作を考えることができます。

それもそうで、数列の場合は1, 2, 3…といったような離散的な値は扱えますが、その間の小数を扱うことはできません。

一方、関数というと基本的に何らかの制限を設けない限りその変数は連続的に変化させることができる実数(あるいは複素数)なので

関数が定義される \(x\) のうちで任意の点 \(x = a\) における極限操作を考えることができるのです。

数学的に表現すると次のようになります。

式(3)

\[ \lim_{~ x \rightarrow a} f(x) = A \]

次の節では、これを利用して当コンテンツ冒頭で触れた関数 \(f(x) = \frac{\sin x}{x}\) の \(x = 0\) 付近における値の解析に迫ります。

不可能を可能にする

前節では \(f(x) = \frac{\sin x}{x}\) に対して \(x \rightarrow \infty\) の極限を考えました。

今度は \(x \rightarrow 0\) の極限を考えます。

これは先述したとおり変数 \(x\) を0に近づけるという意味になります。

この関数は \(x = 0\) を代入すると分母が0となり定義不可能なのでした。

直接代入ができない場合には、極限を利用して目的地点へ限りなく近づけるという操作を行います。

早速ではありますが \(f(x)\) に対して \(x \rightarrow 0\) の操作を行った結果を示します。

\[ \lim_{~ x \rightarrow 0} \frac{\sin x}{x} = 1 \]

上式で示すとおり、0極限の計算結果は1となります。

※証明は別のコンテンツで扱うことにします。

確かに冒頭でも、計算機での計算結果および図示したグラフから「ほぼ1」であることは確認済みです。

しかし、それらが完全な1になることは有り得ないでしょう。

もし \(f(x) = \frac{\sin x}{x}\) が値として1を返そうものなら、それはグラフの位置関係的にも \(x = 0\) が代入される必要があると考えられます。

ただ何度も言うように \(x = 0\) はこの関数に定義されていません。

それにも関わらず、上記で示した極限計算の結果は1に等しいという関係が得られるというのです。

実はここに極限の概念の重要なポイントがあります。

極限という概念には不可能を可能にするという考え方が含まれている

少し胡散臭いですが、厳密な概念に触れずに表現するとなるとこれくらい攻めた表現のほうがむしろ分かりやすい?

例えば、ここまで扱ってきた \(f(x)\) にあたかも \(x = 0\) を代入して1が得られるかのように表現しているのが先程の関係式なのです。

その他にもたくさん極限を利用して不可能を可能にしているものがあります。

別のコンテンツで扱っているテイラー展開やフーリエ級数展開などがそれに当たります。

ここではそれら個別を紹介しきれませんので、各コンテンツで触れることにしましょう。

【サイト運営 : だいご】

今年で物理化学歴11年目になります。

大学入試2次数学でたった3割しか得点できなかったいわゆる数弱落ちこぼれ。それでも好きこそものの上手なれと言ったところか、学会で最優秀賞受賞したり首席卒業できてしまったので、役に立つ知識を当サイトに全て惜しみなく公開しようと思います。ブックマークをオススメ。