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高階導関数

高階導関数

\(n\) 階微分

ある関数 \(f(x)\) が微分可能であり \(\frac{df(x)}{dx}\) という導関数が得られたとします。

もし更に \(\frac{df(x)}{dx}\) が微分可能であるとするなら 2回目の微分(2階微分)によって2階導関数を得ることができます。

式(1)

\[ \frac{d^2f(x)}{dx^2} \]

また、さらにこの2階導関数が微分可能であったなら、3回目の微分(3階微分)を行うことで3階導関数が得られます。

式(2)

\[ \frac{d^3f(x)}{dx^3} \]

このように、微分したものが更に微分できる関数である場合、一般に \(n\) 階微分して得られる導関数を \(n\) 階導関数といいます。

式(3)

\[ \frac{d^n f(x)}{dx^n} \]

またここまでに紹介してきたような式(2)や式(3)など \(n \geq 2\) の導関数は高階導関数とも呼ばれます。

次の節で実際に式(3)を用いて、様々な関数の導関数を求めてみます。

様々な高階導関数

冪関数である \(x^2\) を \(x\) で微分すると「 \(2x\) 」となり、また更に微分をし続けると「 \(2\) 」、次は「 \(0\) 」と言ったように最終的に0に落ち着きます。

一旦0となると、その後いくら微分操作を繰り返しても0のままです。

ここで、前節で説明した \(n\) 階導関数を求めることについて考えなければならないのは、その関数が \(n\) 階微分しても0にならないかどうかという事です。

それならと、\(f(x) = x^m ~ (~ m \geq n ~)\) といった関数を用いれば、この問題が解決されるのはすぐに思いつくことでしょう。

早速こちらの関数を \(n\) 階微分して見ると次の導関数を得ることができます。

\[ \begin{align*} & f(x) = x^m \\[10pt] \xrightarrow{~ d/dx ~} ~ & \frac{df(x)}{dx} = m x^{m - 1} \\[10pt] \xrightarrow{~ d/dx ~} ~ & \frac{d^2f(x)}{dx^2} = m (m - 1) x^{m - 2} \\[10pt] \cdots \\[10pt] \xrightarrow{~ d/dx ~} ~ & \frac{d^nf(x)}{dx^n} = m (m - 1) \cdots \left\{m - (n - 1)\right\} x^{m - n} \\[10pt] \Leftrightarrow ~ & \frac{d^nf(x)}{dx^n} = \frac{m!}{(m - n)!} x^{m - n} \end{align*} \]

この様に \(n\) 階微分するときは、計算結果が存在するのかどうか気を配る必要があります。

しかし、その様な心配が全く必要のない関数もあります。

それは私達もよく知っている、「三角関数」や「ネイピア指数関数」です。

ネイピアの指数関数 \(e^x\) に至っては、微分しても全く形を変えない定義が成されているわけですから、すぐ納得いただけることと思われます。

指数関数の微分

\[ \frac{d^n}{dx^n}e^x = e^x \\[10pt] \]

一方で三角関数についても、微分すると次の周期性があったことを思い出せば \(n\) が何階であろうと無限に微分可能であることが分かります。

三角関数の微分

\[ \cdots \xrightarrow{d/dx} ~ \cos x ~ \xrightarrow{d/dx} ~ -\sin x ~ \xrightarrow{d/dx} ~ -\cos x ~ \xrightarrow{d/dx} ~ \sin x ~ \xrightarrow{d/dx} ~ \cos x ~ \xrightarrow{d/dx} \cdots \]

ライプニッツの公式

\(n\) 階微分を実行する関数が、\(f(x)g(x)\) といった関数どうしの積の形をしているときに有効な公式が存在します。

それにはライプニッツの公式という名称が与えられており、知っておくと計算の手間が省けるなどのメリットがあります。

以下、煩雑になるのを防ぐために関数は \(fg\) と略記することにしましょう。

当公式は実は「積の微分」の上位互換であり、それを踏まえれば内容の把握が行いやすいのではないでしょうか。

おさらいとして示しますが、積の微分公式とは次のとおりでした。

式(4)

\[ \frac{d}{dx}(fg) = \frac{df}{dx} \cdot g + f \cdot \frac{dg}{dx} \]

上式は左辺が1階微分となっていますが、ライプニッツの公式はここを \(n\) 階微分に置き換えたものです。

式(5)

\[ \frac{d^n}{dx^n}(fg) \]

ここから先、どのように計算を進めれば良いのか見通しが立たないので、まずは具体的に \(n = 2\), \(n = 3\) を例に計算してみます。

式(6) : 式(5)について \(n = 2\) の場合

\[ \begin{align*} \frac{d^2}{dx^2}(fg) &= \frac{d}{dx}\left\{\frac{d}{dx}(fg)\right\} \\[20pt] &= \frac{d}{dx} \left( \frac{df}{dx} \cdot g + f \cdot \frac{dg}{dx} \right) ~ (~ \because \text{eq(4)} ~) \\[20pt] &= \frac{d}{dx} \left( \frac{df}{dx} \cdot g \right) + \frac{d}{dx} \left( f \cdot \frac{dg}{dx} \right) \\[20pt] &= \left( \frac{d^2f}{dx^2} \cdot g + \frac{df}{dx} \cdot \frac{dg}{dx} \right) + \left( \frac{df}{dx} \cdot \frac{dg}{dx} + f \cdot \frac{d^2g}{dx^2} \right) \\[20pt] &= \frac{d^2 f}{dx^2} \cdot g ~ + ~ 2 ~ \frac{df}{dx} \cdot \frac{dg}{dx} ~ + ~ f \cdot \frac{d^2 g}{dx^2} \end{align*} \]

続いて \(n = 3\) の場合を計算してみます。

式(7) : 式(5)について \(n = 3\) の場合

\[ \begin{align*} \frac{d^3}{dx^3}(fg) &= \frac{d}{dx}\left\{\frac{d^2}{dx^2}(fg)\right\} \\[20pt] &= \frac{d}{dx} \left( \frac{d^2 f}{dx^2} \cdot g + 2 \frac{df}{dx} \cdot \frac{dg}{dx} + f \cdot \frac{d^2 g}{dx^2} \right) ~ (~ \because \text{eq(6)} ~) \\[20pt] &= \frac{d}{dx} \left( \frac{d^2 f}{dx^2} \cdot g \right) + \frac{d}{dx} \left( 2 \frac{df}{dx} \cdot \frac{dg}{dx} \right) + \frac{d}{dx} \left( f \cdot \frac{d^2 g}{dx^2} \right) \\[20pt] &= \left( \frac{d^3 f}{dx^3} \cdot g + \frac{d^2 f}{dx^2} \cdot \frac{dg}{dx} \right) + 2 \left( \frac{d^2f}{dx^2} \cdot \frac{dg}{dx} + \frac{df}{dx} \cdot \frac{d^2g}{dx^2}\right) + \left( \frac{df}{dx} \cdot \frac{d^2 g}{dx^2} + f \cdot \frac{d^3 g}{dx^3} \right) \\[20pt] &= \frac{d^3 f}{dx^3} \cdot g ~ + ~ 3 ~ \frac{d^2 f}{dx^2} \cdot \frac{dg}{dx} ~ + ~ 3 ~ \frac{df}{dx} \cdot \frac{d^2 g}{dx^2} ~ + ~ f \cdot \frac{d^3 g}{dx^3} \end{align*} \]

ここまで計算すると法則性が見えてきてきます。

式(6)について各項の係数は「1・2・1」、式(7)では「1・3・3・1」となっていることから、二項定理に非常に似ていることが伺えます。

また関数 \(fg\) に施した微分は、関数 \(f\) あるいは \(g\) のどちらかに幾分かの微分が分配されます。

つまり、例えば \(n = 3\) のときでは、右辺の各項において必ず \(f\) と \(g\) に施された微分の階数の和は3階となっているのです。

これを基に \(n\) 階微分の場合について、計算結果を推測してみると次のように表現できるでしょう。

式(8)

\[ \frac{d^n}{dx^n} (fg) = \sum_{k = 0}^n {}_n \mathrm{C}_k ~ \frac{d^{n - k}f}{dx^{n - k}} \cdot \frac{d^kg}{dx^k} \]

実際式(8)で正しいのですが、本来なら数学的帰納法などで証明する必要があります。

しかし、それは当サイトの目的とは外れてしまうので割愛します。

高階導関数の意味

ところで、高階導関数には一体どのような意味があるのでしょう。

例えば1階導関数の場合、各点における微分係数がグラフの接線の傾きとして意味を持つのでした。

しかし、この様に疑問を提起しておきながらなんですが、一般の \(n\) 階導関数について意味を考えることは当サイトの目的からするとハッキリ言って無意味です。

ただ2階導関数(2階微分)は至るところで出現するため考える意義があります。

そこで以降では簡単な扱いをという意味も兼ねて、2階導関数に限って議論を行うことにしましょう。

内容を理解する際の鉄板はまず定義に戻ることで、次に示す微分の定義式を利用して何か得られないか考えます。

微分の定義式

\[ \frac{df(x)}{dx} = \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{f(x + \Delta x) - f(x)}{\Delta x} \]

これを2階導関数( 式(1) )に対して定義式を適用していきたいのですが、その前に一旦 \(g(x) = \frac{df(x)}{dx}\) と置いてみると見通しが立ちやすくなります。

つまり、2階導関数は1階導関数 \(g(x)\) を更に1階微分したものであることに注意すれば、微分の定義式中の \(f\) をちょうど \(g\) に置き換えたのもに等しくなるはずです。

式(9)

\[ \frac{dg(x)}{dx} = \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{g(x + \Delta x) - g(x)}{\Delta x} \]

これで関数 \(g(x)\) が1階微分されたので、変換前の関数 \(f(x)\) は2階微分されたことになります。

回り道してしまいましたが、式(9)に含まれる \(g\) を再度 \(f\) のみに戻しましょう。

式(10)

\[ \frac{d}{dx}\left(\frac{df(x)}{dx}\right) = \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\frac{df(x + \Delta x)}{dx} - \frac{df(x)}{dx}}{\Delta x} \]

更に右辺に現れる導関数 \(\frac{df}{dx}\) にも次に示すように微分の定義式で書き換えつつ、行き着く先まで計算してみます。

式(11)

\[ \begin{align*} \frac{d}{dx}\left(\frac{df(x)}{dx}\right) &= \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\frac{df(x + \Delta x)}{dx} - \frac{df(x)}{dx}}{\Delta x} \\[20pt] \Leftrightarrow ~ \frac{d^2f(x)}{dx^2} &= \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\textcolor{red}{\lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{f(x + 2\Delta x) - f(x + \Delta x)}{\Delta x}} - \textcolor{red}{\lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{f(x + \Delta x) - f(x)}{\Delta x}}}{\Delta x} \\[20pt] &= \textcolor{red}{\lim_{\Delta x \rightarrow 0}} \frac{\frac{f(x + 2\Delta x) - f(x + \Delta x)}{\Delta x} - \frac{f(x + \Delta x) - f(x)}{\Delta x}}{\Delta x} \\[20pt] &= \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\left\{f(x) + f(x + 2 \Delta x) \right\} - 2f(x + \Delta x)}{(\Delta x)^2} \\[20pt] &= \lim_{\Delta x \rightarrow 0} 2 \cdot \frac{\frac{f(x) + f(x + 2 \Delta x)}{2} - f(x + \Delta x)}{(\Delta x)^2} \end{align*} \]

結果が複雑ですが、順を追っていきましょう。

式(11)右辺の分子に着目してみます。

式(12)

\[ \frac{f(x) + f(x + 2\Delta x)}{2} - f(x + \Delta x) \]

着目してどうするかというと、先述のとおりグラフ化して幾何学的解釈を試みます。

まずは簡単そうな式(12)第2項 \(f(x + \Delta x)\) を見てみることにすると、これは座標上の点 \((x + \Delta x, ~ f(x + \Delta x))\) における \(y\) 座標を表します。

またこの点をPとしましょう。

他方で、式(12)第1項 \(\frac{f(x) + f(x + 2\Delta x)}{2}\) は、座標上の点 \((x,~f(x))\) と点 \((x + 2\Delta x, ~ f(x + 2\Delta x))\) についての中点 \(y\) 座標を与えていることが分かります。

この中点はMと名付けましょう。

更に中点Mの \(x\) 座標は \(x + \Delta x\) となるので、点Pとの間の位置関係は、ちょうどどちらか一方の点が真上あるいは真下にあるという事になります。

もし考えている \(x\) 付近において関数が下に凸であれば、中点Mは点Pの真上に位置するようになります。

二階導関数の幾何学的意味

式(12)は図中の赤色破線の長さを表すことになります。

ただし長さと言っても符号付きで、もし中点Mが点Pよりも下側にある場合には式(12)は負になります。

なぜなら、計算の順序は必ず式(12)が示すとおり(点Mの \(y\) 座標)-(点Pの \(y\) 座標)だからですね。

各点が上からP, Mと並ぶ位置関係にあるなら、先程示したグラフとは異なり \(f(x)\) は上に凸の概形をとることになります。

ここまでの内容が理解できれば2階導関数をイメージできたに等しいでしょう。

式(12)を一部分に持つ2階導関数( 式(11) )は、その符号によってグラフのカーブの描き方を表すことができるのです。

以上を整理すると2階導関数の特徴をまとめると次のようになります。

  • 2階導関数 \(\frac{d^2f(x)}{dx^2}\) が正であれば、その \(x\) 付近におけるグラフは下に凸のカーブを描く
  • 2階導関数 \(\frac{d^2f(x)}{dx^2}\) が負であれば、その \(x\) 付近におけるグラフは上に凸のカーブを描く