高校課程の数学でおそらく学習されているであろう区分求積法についてです。
忘れてしまっている方や、実は学習していないという方に向けて、大学入学後でも全く遅くないので、ここで習得しておきましょう。
区分求積法とは
区分求積法とは、アバウトに説明すると和を積分に置き換える操作を指します。
※当サイトでは数学的に厳密な表現をなるべく避けているので、詳細を知りたい方はぜひネット検索をしてみて下さい。
”積”分と言うだけあって、どことなく”かけ算”のイメージがありますが、\(a \times b\) は \(a\) を \(b\) 個準備して足し合わせていくことと同じなので和と積には深い関係があります。
逆に差と商との間の関係もあります。
前置きは以上にして、数学的記述に入ります。
まずある曲線 \(f(x)\) があるとしましょう。
ある区間 \([a, ~b]\) において曲線 \(f(x)\) と \(x\) 軸とで囲まれる面積を求めたいとします。
当然積分を用いれば、
式(1)\[ \int_a^b f(x)dx \]
と表現できます。
ですが、今回は次のように短冊状の長方形を敷き詰める方式で面積を求めることを考えていくのです。
もし区間 \([a, ~b]\) を \(n\) 等分すると、\(n\) 個の長方形を並べることができます。
またこのとき、すべての長方形について左上の頂点が曲線 \(f(x)\) 上に乗るように配置されていることに注意しましょう。
さて、図をよく見ていただきたいのですが、少々粗っぽいですよね。
本当にこんなものでいいのかと思われるでしょうが、心配の必要はありません。
後ほどキレイに敷き詰められた状態を表現する処理を行いますので、今は我慢して下さい。
一旦これで求めたい面積が近似的に得られることを確認しましょう。
敷き詰めた長方形の面積の和を計算すれば良さそうなので、左から \(k\) 番目の長方形の高さを \(h_k\)、各々の長方形は幅が一定なので底辺を \(\Delta x\) として
式(2)\[ \int_{a}^b f(x) dx \simeq \sum_{k = 1}^n h_k \Delta x \]
となります。
続いて、高さと底辺についてもう少し詳細な表現にしてみましょう。
底辺、すなわち長方形の幅 \(\delta x\) は区間 \([a, ~b]\) の距離を \(n\) で割ることによって得られるので
式(3)\[ \Delta x = \frac{b - a}{n} \]
と表されます。
次に長方形 \(h_k\) の高さを考えましょう。
それぞれの長方形の頂点を \(f(x)\) に一致させていたことを思い出してください。
すると当然、長方形の高さ \(h_k\) は、曲線の \(y\) 座標、すなわち \(f(x)\) と等しくなることが分かります。
よって長方形の左辺が位置する \(x\) 座標を \(x_k\) とすれば、
式(4)\[ h_k = f(x_k) \]
となります。
長方形左辺の \(x\) 座標 \(x_k\) についても具体的な表現を求めておきましょう。
まず、それぞれの長方形がどこに位置するのか順番に傾向を調べておくと…
\(k = 1\) 番目の長方形の \(x\) 座標は \(a\)、\(k = 2\) 番目の長方形の \(x\) 座標は \(a + \Delta x\)、\(k = 3\) 番目の長方形の \(x\) 座標は \(a + 2\Delta x\) \(\cdots\) と \(x\) 座標は \(k\) の増加に伴って \(\Delta x\) ずつ増えていくことが分かります(そうなるように設定しているだけですが)。
これは初項 \(a\)、公差 \(\Delta x\) の等差数列として表現できますよね。
式(5)\[ \begin{align*} x_k &= a + (k-1)\Delta x \\[10pt] &= a + (k - 1) \frac{b - a}{n} \end{align*} \]
以上から、式(3), (4), (5)を用れば、式(2)の右辺は次のように表現できます。
式(6)\[ \sum_{k = 1}^n h_k \Delta x = \sum_{k = 1}^n f\left(a + (k - 1)\frac{b - a}{n}\right)\frac{b - a}{n} \]
ところがちょっと見栄えが悪いので、\(k\) を1つだけズラして \(k = 0\) から始まって、\(n - 1\) で終了するように書き換えてみましょう。
すると、
式(6)’\[ \begin{align*} \sum_{k = 0}^{n - 1} h_k \Delta x &= \sum_{k = 0}^{n - 1} f\left(a + k\frac{b - a}{n}\right)\frac{b - a}{n} \\[10pt] &= \sum_{k = 0}^{n - 1} f\left(a + \frac{k}{n}(b - a)\right)\frac{b - a}{n} \end{align*} \]
となります。
最後に式(2)が等号で結ばれるように、数学的処理を施します。
非常にシンプルで \(n \rightarrow \infty\) の極限をとればいいだけです。
式(7)\[ \int_a^b f(x) dx = \lim_{n \rightarrow \infty} \sum_{k = 0}^{n - 1} f\left(a + \frac{k}{n}(b - a)\right)\frac{b - a}{n} \]
つまりどういう事か説明すると、\(n\) は区間 \([a, ~b]\) をいくつに等分するかを表す数でしたので、これを \(n \rightarrow \infty\) にすると言うことは、非常に細かい無限個の長方形を考えることを意味します。
すると、初めに指摘した長方形と曲線 \(y=f(x)\) との間の隙間をキレイに埋めることができるようになるのです。
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今年で物理化学歴11年目になります。
大学入試2次数学でたった3割しか得点できなかったいわゆる数弱落ちこぼれ。それでも好きこそものの上手なれと言ったところか、学会で最優秀賞受賞したり首席卒業できてしまったので、役に立つ知識を当サイトに全て惜しみなく公開しようと思います。ブックマークをオススメ。