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シャルルの法則

温度と体積の関係 : シャルルの法則

気体の体積変化は圧力による要因だけではありません。

例えば膨らませた風船を冷やすと小さく縮んだり、また温めると大きく膨張したりすることを私達は知っています。

このような気体の体積と温度の関係はシャルルの法則によって整理されます。

式(3)

\[ V = C_2 T ~~~ (~ C_2 > 0 ~) \]

ここで \(C_2\) は正の定数であり、気体の体積 \(V\) と温度 \(T\) には比例関係にあることが示されています。

また温度 \(T\) には絶対温度が適用されます。 絶対温度とは、気体の体積から定められるものであり \(T > 0\) を満たす温度のことです。

またシャルルの法則を適用するためには気体にかかる圧力が一定でなければならないことに注意しましょう。

ところで式(10)をよく見てみると気体の体積は \(V > 0\) であるため、温度も \(T > 0\) を満たす必要があることに気がつくでしょう。

例えば、\(T = -5 ~ [\text{℃}]\) としてしまうと、気体の体積は負になってしまいます…

しかし実際は \(0 ~ [\text{℃}]\) 以下でも気体は正の体積を持ちます。

一体どういうことでしょうか?

これは私達が普段利用する温度である「 \(\text{℃}\) 」、すなわちセルシウス温度を式(10)に当てはめたことによる誤解なのです。

セルシウス温度とは水を基準物質として定めた温度であり、その凝固点を0、沸点を100と設定されたものです。

それら2点の間を100等分した1目盛り分が 1 \([\text{℃}]\) に相当します。

一方で、上記の問題が生じない温度を定義することができます。 私達はケルビン \([\text{K}]\) という次元が与えられた絶対温度と呼ばれる温度を定義することができます。

絶対温度とは気体の体積から決められる温度であり、気体の体積が 0 となる点を温度 0 として定義します。

すると体積は必ず正の値を取るため、絶対温度も正の値をとるようになりますね。

シャルルの法則ではセルシウス温度ではなく、このような絶対温度を利用するのが便利なのです。

もしかしたら、温度はいくらでも低温になるし高い方にもなるものだと思っていた方がいるかも知れません。

筆者がそうでした。

しかし今、この絶対温度を定義することによって私達は温度に零点を設定したのです。

あるいは、温度にはゼロを表す起点が存在するとも言えるでしょう。

私達が温度を正確に扱っていくためには、この零点の理解が必要不可欠です。

その詳細は次項で明らかにしていくことにします。

絶対温度と絶対零度

絶対温度とは気体の体積 \(V\) に対応する温度です。

そして体積が 0 のときに、絶対温度も 0 となるように設定します。

この気体が 0 になる温度のことを絶対零度と呼び、絶対温度は絶対零度を下回ることはありません。

ここからもう少し絶対零度について詳細を明らかにしていくことにします。

具体的には、絶対零度がセルシウス温度換算で何度 \([\text{℃}]\) に相当するかを計算して行きます。

その実を言ってしまうと、計算方法の原理的側面は前節で示した大気圧を導くプロセスと全く同じです。

したがってグラフで理解することができるので、早速次の図を見てもらうことにしましょう。

気体の体積とセルシウス温度のグラフ

セルシウス温度を \(t ~ [\text{℃}]\) として、測定温度に対する気体の体積 \(V ~ [\text{m}^3]\) をグラフ化したものです。

シャルルの法則が教えてくれるように、実際に気体の体積と温度は比例関係にあることが分かります。

測定データが上手く乗るような1つの直線について、気体の体積が 0 となる点は横軸との交点ですね。

この点の横軸の値が絶対零度に相当し、グラフを見ると約 -300 \([\text{℃}]\) を指しています。

厳密に測定したとき、絶対零度を \(T_0\) として

式(16)

\[ T_0 = -273.15 ~ [\text{℃}] \]

が得られます。

絶対温度とセルシウス温度の関係

絶対零度の具体値を知ることができた今、私達はセルシウス温度に対応する絶対温度を見出すことができます。

結論から言ってしまえば、絶対温度 \(T\) はセルシウス温度 \(t\) を利用して次式で表現されます。

式(17)

\[ T = t + 273.15 \]

これが何を表しているかと言うと、

セルシウス温度の目盛りが振られたものさしを、そのままマイナス側へ 273 目盛り分スライドさせたものを意味します。

一方グラフに着目すると、直線が座標の原点を通るように平行移動させたものであるということができます。

気体の体積と絶対温度のグラフ

グラフ上の直線は微妙に原点を通っていませんが許して下さい。前述の通りこれはあくまでも実験データに最もフィットする直線を引いているだけだからです。

理論と実験値はピッタリとは一致しません。必ず誤差が生じます。

何度も言うように、絶対温度は気体の体積が 0 のときに同様に 0 を取る温度のことであり、それを理論化したシャルルの法則を表す直線は原点を通るというだけです。