電荷同士を近くに置いたとき互いに電気的な力が作用し、引き合ったり、反発する挙動を示します。
しかし、電荷が電気的な力を受ける理由の説明として、正しくは電場と呼ばれる「場」の概念によってなされる必要があると結論されています。
当ページでは、その電気的な力を生み出す電場について定義や特徴について解説し、その計算方法を理解していきます。
■目次■
電場の定義
電場とは、試験電荷を置くと電気的な力を受ける「場」と呼ばれる概念です。
空間の任意の点に置かれた試験電荷 \(q\) が電気的な力 \(\boldsymbol{F}\) を受けるとき、単位電荷あたりの力を電場として定めます。
電場を \(\boldsymbol{E}\) とすると定期から
\[ \boldsymbol{E} = \frac{\boldsymbol{F}}{q} \]
と記述されます。
定義式(1)から電場は \([\text{N/C}]\) を次元に持つことが分かります。
電場の特徴
電場の主な特徴を以下に整理します。
ベクトル量としての性質
電場はベクトル量であり、大きさと方向を持つ物理量です。その方向は、電荷が受ける力と平行になります。
電場の定義式(1)から分かる通り、試験電荷 \(q\) が正電荷である場合は、電場と同じ向きに力を受けます。
他方で、試験電荷 \(q\) が負電荷である場合は、電場と真逆の向きに力を受けます。
電場の発生源
電荷は自身以外の周囲の電荷からクーロン力を受けますが、冒頭でも述べたように正しくは「電荷は電場から力を受ける」と解釈する必要があります。
すると、電荷は周囲の電荷に電気的に力を及ぼしているため電場を生み出していると解釈すると言えます。
では、点電荷が生み出す電場とはどのように記述されるのでしょうか?
空間のある点に固定された電荷 \(Q\) から試験電荷 \(q\) が受けるクーロン力 \(\boldsymbol{F}\) はクーロンの法則から次式で与えられます。
\[ \boldsymbol{F} = k \frac{Qq}{r^3} \boldsymbol{r} \]
\(\boldsymbol{r}\) は固定電荷 \(Q\) を起点とした試験電荷 \(q\) の位置ベクトル、\(r\) はその絶対値を表しています。
このまま、試験電荷が受ける力 \(\boldsymbol{F}\) を電場の定義式(1)に代入してみましょう。すると次式が得られます。
\[ \boldsymbol{E} = k\frac{Q}{r^3} \boldsymbol{r} \]
これが点電荷 \(Q\) が自身の周囲に形成する電場です。
重ね合わせの原理
点電荷が複数存在する場合、その空間に形成される電場 \(\boldsymbol{E}\) はそれぞれの点電荷が形成する電場の和となります。
これを重ね合わせの原理と呼び、\(i\) 番目の点電荷が空間に形成する電場を \(\boldsymbol{E}_i\) としたとき
\[ \boldsymbol{E} = \boldsymbol{E}_1 + \boldsymbol{E}_2 + \cdots + \boldsymbol{E}_i + \cdots \]
と記述されます。
複数の電荷が存在する空間中に置かれた試験電荷にはたらく総合的な力も、各電荷から受けるクーロン力の和として表現できます。これも重ね合わせの原理と呼ばれ次式で表されます。
\[ \boldsymbol{F} = \boldsymbol{F}_{1} + \boldsymbol{F}_{2} + \cdots + \boldsymbol{F}_{i} + \cdots \]
\(\boldsymbol{F}_{i}\) は試験電荷が空間中の \(i\) 番目の電荷から及ぼされるクーロン力を表し、\(\boldsymbol{F}\) は試験電荷が総合的に受ける力を表しています。
試験電荷の電荷量を \(q\) とするとき、電場の定義式(1)を用いると式(5)は次のように書き換える事ができます。
\[ q\boldsymbol{E} = q\boldsymbol{E}_1 + q\boldsymbol{E}_2 + \cdots + q\boldsymbol{E}_i + \cdots \]
両辺を試験電荷の電荷量 \(q\) で割ると、直ちに電場の重ね合わせの式(5)が得られることを確認できるでしょう。
電場の可視化
点電荷が形成する電場
電場は、系の状況によって様子を変化させます。数学的に記述された電場だと電荷が受ける力を定量的に扱うことを容易にしますが、ときに定性的に電荷の挙動を理解できると便利な場合があります。
電場はベクトル量であり、一般的にはベクトル場を図解して視覚的に表現されることが多いです。
次の図を見て下さい。
こちらは中央に正の固定点電荷 \(Q\) を配置したとき周囲に形成される電場の様子です。ただし、上図は2次元平面で表現された電場であることに注意して下さい。
矢印は試験電荷を置いたときに受ける力の向きであり、また矢印の色によって試験電荷が受ける力の大きさを表しています。濃い赤色矢印のある箇所に試験電荷を配置すると大きな力を受け、薄い矢印のある箇所に配置すると電場から受ける力は小さくなります。
要するに、中央の固定電荷に近い箇所に試験電荷を置くほど強い斥力が働き、逆に離れた箇所に試験電荷を置くと大きな影響は及ぼされないと理解できるでしょう。
この現象は次に示した 正の固定点電荷が作る電場から試験電荷が受ける力の式からも明らかなとおり、固定電荷からの距離 \(r\) が大きくなるほど受ける力 \(\boldsymbol{F}\) は小さくなります。
\[ \boldsymbol{F} = q\boldsymbol{E} = k\frac{Qq}{r^3} \boldsymbol{r} \]
他方で、中央に負の固定電荷を配置したときの電場の様子が次の図です。
試験電荷を固定電荷のある中央付近に置くほど強い引力がはたらき、逆に離れた位置では大きく影響は及ぼされません。
このように電場のような向きを持った量を扱う際は、時と場合によって数学あるいは図解を使い分けできると便利です。
2つの点電荷が形成する電場
空間に2つの固定点電荷 \(Q_1\), \(Q_2\) を配置したときに周囲に形成される電場を計算してみましょう。
点電荷の周囲に形成される電場は式(3)で与えられ、また電場は重ね合わせの原理が成立しているので、点電荷 \(Q_1\), \(Q_2\) が形成する電場をそれぞれ \(\boldsymbol{E}_1\), \(\boldsymbol{E}_2\) とすると求める電場 \(\boldsymbol{E}\) はクーロンの法則から次式で与えられます。
\[ \boldsymbol{E} = \boldsymbol{E}_1 + \boldsymbol{E}_2 \]
続いて、\(\boldsymbol{E}_1\) および \(\boldsymbol{E}_2\) を具体的な表式にしていきますが、点電荷が形成する電場の式(3)でそのまま置き換えることは不可能です。
注意しなければならないのは位置ベクトルの記述で、式(3)による電場の記述は点電荷の位置を始点 ( または原点 ) としています。
つまり、点電荷 \(Q_1\) の位置 \(\boldsymbol{r}_1\) を始点にとって任意の位置 \(\boldsymbol{r}\) を指し示す場合、位置ベクトルの差 \(\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}_1\) を用いる必要があります。
上記に注意して式(8)に式(3)の結果を適用すると次式が得られます。
\[ \boldsymbol{E} = k\frac{Q_1}{|\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}_1|^3} (\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}_1) + k\frac{Q_2}{|\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}_2|^3} (\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}_2) \]
式(9)から任意の点 \(\boldsymbol{r}\) における電場の大きさと向きを知ることができますが、定性的に電場の様子を確認するにはベクトル場を図示したほうが分かりやすく次図のようになります。
点電荷の配置が複雑な場合
複雑に配置された点電荷が形成する電場の数学的記述の確認と可視化をしてみましょう。
空間の位置 \(\boldsymbol{r}_1\), \(\boldsymbol{r}_2\) \(\cdots\) \(\boldsymbol{r}_n\) にそれぞれ固定点電荷 \(Q_1\), \(Q_2\) \(\cdots\) \(Q_n\) が配置されているとします。
それぞれの固定点電荷 \(Q_i\) が任意の位置 \(\boldsymbol{r}\) に形成する電場を \(\boldsymbol{E}_i(\boldsymbol{r})\) としたとき、全体の電場 \(\boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})\) は次式で与えられます。
電場 \(E(\boldsymbol{r})\) は次式で記述されます。
\[ E(\boldsymbol{r}) = \sum_{i = 1}^n \boldsymbol{E}_i(\boldsymbol{r}) = \sum_{i = 1}^n k\frac{Q_i}{|\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}_i|^3} (\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}_i) \]
例えば、次の図は 固定点電荷の位置 \(\boldsymbol{r}_i ~ ( 1 \leq i \leq 10 )\) および電荷量 \(Q_i ~ ( 1 \leq i \leq 10 )\) を適当に定めた場合の電場です。
更に電荷の数が増えて分布が複雑になってくると、電荷を点としてよりも領域として扱う方が便利になります。
次の図は、固定点電荷を適当に 100 個用意した場合の様子です。ただし前述までのように電荷の符号は色で区別していません。
青色の領域に試験電荷を置いたとき、電気的な力を大きく受けます。
位置によって電荷量が異なる複雑な系では電荷密度を定義すると便利です。
電荷密度は単位体積あたりの電荷量を表し \([\text{C/m}^3]\) を次元に持ちます。
位置 \(\boldsymbol{r}'\) の微小体積 \(dV'\) の電荷を \(dQ\)、また電荷密度を \(\rho(\boldsymbol{r}')\) としたとき、次の関係が成立します。
\[ dQ = \rho(\boldsymbol{r}') dV' \]
これを空間全体 \(D\) に対して足し合わせることで総電荷量 \(Q\) を求められますが、それは次の積分によって与えられます。
\[ Q = \iiint_D \rho(\boldsymbol{r}') dV' \]
念の為ですが…位置ベクトルは \(\boldsymbol{r}' = \boldsymbol{r}'(x', ~ y', ~ z')\)、また微小体積は \(dV' = dx'dy'dz'\) のことであり、\(\boldsymbol{r}'\) および \(V'\) を独立した変数としてみなさないことに注意です。
つまり、式(12)を安直に次のように計算するのは誤りとなります。
\[ Q = \rho(\boldsymbol{r}') V' \]
もちろん、電荷密度が位置に依らず一様であれば上記の計算は正しいですが、その場合は電荷密度を用いた記述は無駄になります。
続いて、上記までの内容から電荷が複雑に分布する場合に形成される電場をどのように記述すれば良いか考えます。
位置 \(\boldsymbol{r}'\) ( または微小体積 \(dV'\) 内 ) に存在する電荷 \(dQ\) が位置 \(\boldsymbol{r}\) に形成する電場は次のように記述することができます。
\[ \begin{align*} &\text{eq(12.1)} ~~~~~ && &k \frac{dQ}{|\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}'|^3} (\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}') && \\[15pt] &\text{eq(12.2)} ~~~~~ &&= &k \frac{\rho(\boldsymbol{r}')dV'}{|\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}'|^3} (\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}') && ( ~ \because ~ \text{eq(11)} ~ ) \end{align*} \]
式(10)と同じように、その他の電荷が形成する電場の影響は重ね合わせの原理によって足し合わせればよく、式(12.2)の場合 それは積分によって表されるので空間全体 \(D\) に対して積分をした次式…
\[ \boldsymbol{E}(\boldsymbol{r}) = \iiint_D k \frac{\rho(\boldsymbol{r}')dV'}{|\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}'|^3} (\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}') \]
上記 式(13)が求める電場 \(\boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})\) となります。
電場の計算例
式(13)を利用して特定の電荷密度・電荷分布をもつ場合の電場を計算してみましょう。
ここでは次の項目について詳しく解説を行っていきます。
- \(z\) 軸上に一様に分布する電荷が作る電場
- \(xy\) 平面上に一様に分布する電荷が作る電場
\(z\) 軸上に一様に分布する電荷が作る電場
\(z\) 軸上に無限遠方まで一様に分布した電荷が作る電場を計算してみましょう。
線状に分布する電荷を考える場合、式(13) 電荷密度 \(\rho ~ [\text{C/m}^3]\) の代わりに線密度 \(\lambda ~ [\text{C/m}]\) を利用します。
線密度は、その次元 \([\text{C/m}]\) からも明らかのように、単位長さあたりの電荷量を表しています。
線密度を用いると \(z\) 軸上の線素 \(dz'\) がもつ電荷量を \(\lambda(z')dz'\) と記述することが可能です。そして重ね合わせの原理にしたがって、各線素から及ぼされる影響の総和を計算すれば 位置 \(\boldsymbol{r}\) に形成される電場を求められます。
数学的には次式によって記述されます。
\[ k\frac{\lambda(z')dz'}{|\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}'|^3} (\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}') \]
任意の位置 \(\boldsymbol{r}\) および線素の位置 \(\boldsymbol{r}'\) は
\[ \begin{align*} &\boldsymbol{r} = (x, ~ y, ~ z) \\[15pt] &\boldsymbol{r}' = (0, ~ 0, ~ z') \end{align*} \]
であるから、式(14)に代入して整理すると次式が得られます。
\[ k\frac{\lambda xdz'}{\left\{ x^2 + y^2 + (z - z')^2 \right\}^{\frac{3}{2}}} \boldsymbol{e}_x + k\frac{\lambda ydz'}{\left\{ x^2 + y^2 + (z - z')^2 \right\}^{\frac{3}{2}}} \boldsymbol{e}_y + k\frac{\lambda (z - z')dz'}{\left\{ x^2 + y^2 + (z - z')^2 \right\}^{\frac{3}{2}}} \boldsymbol{e}_z \]
ここで、\(z\) 軸上の電荷は一様に分布するため線密度を定数として \(\lambda(z') = \lambda\) にしました。
続けて、重ね合わせの原理からすべての線素について積分していきます。積分範囲は \((-\infty, ~ \infty)\) なので、結局 位置 \(\boldsymbol{r}\) における電場 \(\boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})\) は
\[ \boldsymbol{E}(\boldsymbol{r}) = \int_{-\infty}^{\infty} k\frac{\lambda xdz'}{\left\{ x^2 + y^2 + (z - z')^2 \right\}^{\frac{3}{2}}} \boldsymbol{e}_x + \int_{-\infty}^{\infty} k\frac{\lambda ydz'}{\left\{ x^2 + y^2 + (z - z')^2 \right\}^{\frac{3}{2}}} \boldsymbol{e}_y + \int_{-\infty}^{\infty} k\frac{\lambda (z - z')dz'}{\left\{ x^2 + y^2 + (z - z')^2 \right\}^{\frac{3}{2}}} \boldsymbol{e}_z \]
となります。
式(17)の計算には次の積分公式を適用していきます。
\[ \begin{align*} &\int_{-\infty}^{\infty} \frac{dx}{\left( x^2 + a^2 \right)^{\frac{3}{2}}} = \frac{2}{a^2} \\[20pt] &\int_{-\infty}^{\infty} \frac{xdx}{\left( x^2 + a^2 \right)^{\frac{3}{2}}} = 0 \end{align*} \]
すると最終的に次のように整理されます。
\[ \boldsymbol{E}(\boldsymbol{r}) = k\frac{2\lambda x}{x^2 + y^2} \boldsymbol{e}_x + k\frac{2\lambda y}{x^2 + y^2} \boldsymbol{e}_y \]
式(18)で得られた通り、位置 \(\boldsymbol{r}\) に形成される電場 \(\boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})\) は、\(\boldsymbol{e}_x\) および \(\boldsymbol{e}_y\) にのみ依存します。
つまり \(z\) 軸上に一様に分布する電荷が周囲に形成する電場は、同じ \(z\) 軸方向には影響を及ぼさず、軸とは垂直な方向にのみ影響を与えることが分かります。
電場の大きさを求めておくと…
\[ \begin{align*} \text{eq(19.1) :} ~~~~~ &E^2(\boldsymbol{r}) &&= \boldsymbol{E}(\boldsymbol{r}) \cdot \boldsymbol{E}(\boldsymbol{r}) \\[15pt] \text{eq(19.2) :} ~~~~~ &&&= k^2\frac{4\lambda^2}{(x^2 + y^2)^2} ~ (x \boldsymbol{e}_x + y \boldsymbol{e}_y) \cdot (x \boldsymbol{e}_x + y \boldsymbol{e}_y) \\[15pt] \text{eq(19.3) :} ~~~~~ &&&= k^2\frac{4\lambda^2}{x^2 + y^2} \\[15pt] \text{eq(19.4) :} ~~~~~ &&&= k^2\frac{4\lambda^2}{d^2} ~~~ ( ~ d^2 \equiv x^2 + y^2 ~ ) \\[30pt] \text{eq(19.5) :} ~~~~~ &&&\therefore ~ E(\boldsymbol{r}) = k\frac{2\lambda}{d} \end{align*} \]
となります。
\(z\) 軸からの距離を新たに \(d\) と置きました。式(19.5)で与えられるように、電場の大きさは \(z\) 軸からの離れるほど小さくなることが分かります。
\(xy\) 平面上に一様に分布する電荷が作る電場
\(xy\) 平面上に無限遠方まで一様に分布した電荷が作る電場を計算してみましょう。
面上に分布する電荷を考える場合、式(13) 電荷密度 \(\rho ~ [\text{C/m}^3]\) の代わりに面密度 \(\sigma ~ [\text{C/m}^2]\) を利用します。
面密度は、その次元 \([\text{C/m}^2]\) からも明らかのように、単位面積の電荷量を表しています。
面密度を用いると \(xy\) 平面上の面素 \(dS'\) がもつ電荷量を \(\sigma(x', ~ y')dS'\) と記述することが可能です。そして重ね合わせの原理にしたがって、各面素から及ぼされる影響の総和を計算すれば 位置 \(\boldsymbol{r}\) に形成される電場を求められます。
数学的には次式によって記述されます。
\[ k\frac{\sigma(x', ~ y') dx'dy'}{|\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}'|^3} (\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}') \]
任意の位置 \(\boldsymbol{r}\) および線素の位置 \(\boldsymbol{r}'\) は
\[ \begin{align*} &\boldsymbol{r} = (x, ~ y, ~ z) \\[15pt] &\boldsymbol{r}' = (x', ~ y', ~ 0) \end{align*} \]
であるから、式(20)に代入して整理すると次式が得られます。
\[ k\frac{\sigma (x - x') dx'dy'}{\left\{ (x - x')^2 + (y - y')^2 + z^2 \right\}^{\frac{3}{2}}} \boldsymbol{e}_x + k\frac{\sigma (y - y') dx'dy'}{\left\{ (x - x')^2 + (y - y')^2 + z^2 \right\}^{\frac{3}{2}}} \boldsymbol{e}_y + k\frac{\sigma z dx'dy'}{\left\{ (x - x')^2 + (y - y')^2 + z^2 \right\}^{\frac{3}{2}}} \boldsymbol{e}_z \]
ここで、\(xy\) 平面上の電荷は一様に分布するため面密度を定数として \(\sigma(x', ~ y') = \sigma\) にしました。
続けて、重ね合わせの原理からすべての面素について積分していきます。積分範囲は \(x'\), \(y'\) ともに \((-\infty, ~ \infty)\) なので、結局 位置 \(\boldsymbol{r}\) における電場 \(\boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})\) は
\[ \boldsymbol{E}(\boldsymbol{r}) = \int_{-\infty}^{\infty} \int_{-\infty}^{\infty} k\frac{\sigma (x - x') dx'dy'}{\left\{ (x - x')^2 + (y - y')^2 + z^2 \right\}^{\frac{3}{2}}} \boldsymbol{e}_x + \int_{-\infty}^{\infty} \int_{-\infty}^{\infty} k\frac{\sigma (y - y') dx'dy'}{\left\{ (x - x')^2 + (y - y')^2 + z^2 \right\}^{\frac{3}{2}}} \boldsymbol{e}_y + \int_{-\infty}^{\infty} \int_{-\infty}^{\infty} k\frac{\sigma z dx'dy'}{\left\{ (x - x')^2 + (y - y')^2 + z^2 \right\}^{\frac{3}{2}}} \boldsymbol{e}_z \]
式(23)の計算には次の積分公式を適用していきます。
\[ \begin{align*} &\int_{-\infty}^\infty \int_{-\infty}^\infty \frac{dxdy}{\left( x^2 + y^2 + a^2 \right)^{\frac{3}{2}}} = \frac{2\pi}{a^2} \\[20pt] &\int_{-\infty}^\infty \int_{-\infty}^\infty \frac{x dxdy}{\left( x^2 + y^2 + a^2 \right)^{\frac{3}{2}}} = 0 \end{align*} \]
すると最終的に次のように整理されます。
\[ \boldsymbol{E}(\boldsymbol{r}) = k\frac{2\pi \sigma}{z} \boldsymbol{e}_z \]
また、電場の大きさは次のとおりです。
\[ E(\boldsymbol{r}) = k\frac{2\pi \sigma}{z} \]
式(25)で与えられるように、電場の大きさは \(xy\) 平面から離れるほど小さくなることが分かります。
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今年で物理化学歴12年目になります。
大学入試2次数学でたった3割しか得点できなかったいわゆる数弱落ちこぼれ。それでも好きこそものの上手なれと言ったところか、学会で最優秀賞受賞したり首席卒業できてしまったので、役に立つ知識を当サイトに全て惜しみなく公開しようと思います。ブックマークをオススメ。