熱とは何か?【結論:熱はエネルギーの流れ】温度との違いも分かりやすく解説

投稿日2025年08月27日
更新日2025年10月03日

熱とは何か説明できますか?

当コンテンツでは「熱」とは何か、またよく混同される「温度」との違いについて解説していきます。

熱とは

早速結論から。次に示すのは日本化学工学会による熱の説明です。

熱とは、エネルギーが温度差を推進力として移動する際にとる過渡的な形態である

日本化学工学会

日常的に「熱」というと、「温度」が高い状態をイメージするかも知れません。

しかし上記に示す通り「熱」は「温度」があって初めて定義されることが分かるでしょう。つまり これらには明確な違いがあるわけです。

では、その違いとは何でしょうか。

温度は状態を表し、熱は変化を与える

「温度」は物体の「状態」を表す際に利用され、対して「熱」は物体の状態の「変化」を表す際に利用されます。

もう少し具体的な例を用いて理解していきます。

室温が保たれた部屋に水を入れたカップを用意します。

水が入ったカップ

この水の温度を測定するとその時点では 25 \([{}^\circ\text{C}]\) であることが分かりました。

では、一定の時間を空けて再度水の温度を測定したところどのような結果が得られるでしょうか。その期間に何事も無ければ、水の温度は先と変わることなく 25 \([{}^\circ\text{C}]\) となることでしょう。

なぜ同じ結果が得られるかというと「状態」が一定になるように保たれているからであり、言い換えると「温度」によって水の「状態」が決定されていると表現することができます。

温度のより詳しい内容はこちらを参照ください。


一方で、熱は「変化」を与えるものです。

今度はカップに注がれたお湯を考えます。

静置しておくと、時間の経過とともに冷めることが想定されます。

時間経過に伴って冷めるお湯

お湯の温度が時々刻々と高温から低温に「変化」していますが、このとき お湯から「熱」が放出されています。これを放熱と呼びます。

つまり 熱によってお湯の "状態" が「変化」した⋯ 状態とは温度のことだったので、熱によって温度が変化したと理解することができます。

さて、温度と熱の違いについて理解が進んできましたが、そもそもどうしてお湯は放熱したのでしょうか。

温度が高かったからという回答が一般的かも知れません⋯。

しかしよく考えてみてください! 何度から温度が高いと言えるのか!?

室温 25 \([{}^\circ\text{C}]\) は温度が高くないのか?低いのか?

もう一つ見逃している事があります。それは冒頭で示した日本化学工学会による熱の説明で既に触れています。

熱の発生原因は温度差

日本化学工学会によると、熱は温度差によって発生すると説明されています。

例えば \(t_{\text{high}} [{}^\circ\text{C}] \gt t_{\text{low}} [{}^\circ\text{C}]\) の温度をもつ物体を用意し互いに接触させた状況を考えます。

高温物体と低温物体の接触により生じる熱の流れ

すると、接触部には \(t_{\text{high}} - t_{\text{low}}\) の温度差があるため熱の流れが生じると言うわけです。

そして熱が流れる方向にも着目してください。熱は、温度が高い物体から、温度が低い物体に向かって流れます。正確には、その様に定める訳です。

川の流れに例えるとイメージが湧きやすいでしょう。川の水は標高が高いところから標高が低いところに流れていくのと同じ様に考えてください。

逆に! 温度差がなければ熱は発生しないことも また非常に重要な事項です。

極端ですが、例えば 100 \([{}^\circ\text{C}]\) もの物体があると その物体からは放熱が生じていると思ってしまいがち⋯。しかし物体の周囲も同じく 100 \([{}^\circ\text{C}]\) であれば温度差は存在しないので放熱は生じないという理屈です。

また、以上のことから温度の高さは絶対的なものではなく比較対象があって初めて決まることも気づけるはずです。つまり、ある物体の温度が高いことを主張するには、その物体よりも温度が低い物体が存在しなければならない訳です。

例えば 100 \([{}^\circ\text{C}]\) の物体があり一般的に超高温と思われるような状態でも、99 \([{}^\circ\text{C}]\) の物体視点からするとたった 1 \([{}^\circ\text{C}]\) の差であり、他にも 200 \([{}^\circ\text{C}]\) の物体視点からすると超低温という捉え方になります。


ここで前のセクションで触れた カップに入ったお湯が冷めていく現象 に当てはめて考えてみます。

時間経過に伴って冷めるお湯

お湯は何も手を加えず静置させておくと 時間経過とともに冷めていき状態を変化させます。要するに熱の流れが生じている訳です。

そして熱の発生に必要な温度差ですが、それはお湯と周囲の空気との間に存在しています。要するに お湯が高温物体であり、周囲の空気が低温物体だということです。

周囲の空気と比較して カップに入ったお湯は温度が高いので、お湯から周囲の空気に向かって熱が流れていき 最終的にお湯が冷める結果となります。

ただし上記の説明で厳密にはカップも考慮する必要がありますが、ここでは簡単のために無視しました。

熱の発生による物体の温度変化

物体間での熱のやり取りによって、物体は温度変化を生じるようです。実際に、カップに注がれたお湯は時間とともに冷めていくことからも分かるでしょう。

では、どうしてお湯は温度を上昇させる選択をせずに、一方的に冷めるという温度変化を辿るのでしょうか?

この問題を理解するためには、熱力学における重要概念の1つ「平衡状態」について説明しなければなりません。

その内容は至って簡単で、既に経験的事実として理解していることでしょう。具体的には、状態を変化させている物体は ある均衡点に到達するとそれ以降の変化を示さなくなるという現象です。

カップに注がれたお湯は時間とともに冷めていきますが、際限なく冷め続けるわけではありません。ある温度に到達すると、それ以降 温度に変化を示さす一定値を指すようになり、まさにこれが平衡に達した状態という訳です。


さて、ここまでの内容から どうしてカップに注がれたお湯は冷めていくのかを理解できます。

高温物体と低温物体の接触により生じる熱の流れ

改めて⋯温度差を持つ2つの物体間では熱のやり取りが発生し、平衡状態に向かって状態を変化させようとします。

その変化は温度変化として確認できますが、平衡状態に到達すると物体は温度変化を示さなくなり一定値を指すようになります。

逆に言えば、物体間の温度差がなければ、物体間で熱のやり取りは行われない訳です。

ここから分かるのは、温度差のある物体間で熱のやり取りが行われるとき 温度差がなくなるように状態を変化させるということです。つまり、高温物体は冷め、低温物体は温まるという結論になります。

では、カップに注がれたお湯はどうでしょうか。お湯は熱のやり取りを行う周囲の空気と比較して温度が高いため 冷めるしかないと分かるでしょう。

熱の定量的な扱い方

物体間でやり取りされた熱を定量的に扱えたほうが便利です。

高温物体と低温物体との間で生じる熱現象は次のステップで進行します。

  1. 高温物体と低温物体との間にある温度差によって 熱の流れが生じる
  2. 熱のやり取りによって 各物体それぞれの温度が変化する
  3. 各物体の温度変化は 物体間の温度差が無くなるまで変化し、最終的に平衡状態に到達する

そして 平衡状態に向かう高温物体は温度が下がり、逆に低温物体は温度が上がるので、最終的に落ち着く温度はそれぞれの初期温度 \(t_\text{high}\) と \(t_\text{low}\) の中間になる必要があります。

平衡状態における温度を \(t [{}^\circ\text{C}] \in [t_\text{low}, ~ t_\text{high}]\) として、物体の状態変化前後を表にまとめてみると⋯

変化前 変化後 温度変化 \(\Delta t\)
高温物体 \(t_{\text{high}}\) \(t\) \(t_{\text{high}} - t\)
低温物体 \(t_{\text{low}}\) \(t\) \(t - t_{\text{low}}\)

そして 繰り返しになりますが、各物体の温度変化は 各物体間での熱のやり取りによって生じるので、発生する熱を \(Q\) としたときに温度変化 \(\Delta t\) との間に比例関係が成立していると都合が良いでしょう。

\[ Q \propto \Delta t \]

係数を \(C\) として次の関係式が得られます。

\[ Q = C \Delta t \]

また高温物体および低温物体の状態変化に利用された熱をそれぞれ \(Q_\text{high}\), \(Q_\text{low}\)、係数を \(C_\text{high}\), \(C_\text{low}\) としたとき、式(2)に従えば次式が得られます。

\[ \begin{align*} Q_\text{high} &= C_\text{high} (t_\text{high} - t) \\[15pt] Q_\text{low} &= C_\text{low} (t - t_\text{low}) \end{align*} \]

高温物体と低温物体の間でやり取りされる熱は互いに等しいと考えられ、\(Q_\text{high} = Q_\text{low}\) が成立するはずで、改めて熱を \(Q\) として次の関係が導かれます。

\[ Q = C_\text{high} (t_\text{high} - t) = C_\text{low} (t - t_\text{low}) \]


式(4)を次のように変形してみます。

\[ C_\text{high} : C_\text{low} = (t - t_\text{low}) : (t_\text{high} - t) \]

式(5)に示す通り、各物体の係数 \(C\) と温度変化 \(\Delta t\) の間には逆比の関係が成立しています。つまり温度変化が大きい物体ほど係数 \(C\) は小さい値を持つということです。

この係数 \(C\) は熱容量と呼ばれており、物体の温度変化のしやすさを決定する物質固有の値として利用されています。

歴史的には、物質内部に熱を蓄えておく容器のようなものが存在し、加えられる熱が容器に満たされれれば 1 \([{}^\circ\text{C}]\) 上昇すると考えられていました。つまり、熱容量が小さいと熱を蓄えておく容器が小さく熱がすぐに満たされるので温度が上がりやすいという解釈です。

厳密性を問うなら誤った理解にはなりますが、熱容量の特徴の覚え方としては面白いと考えています。