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多変数関数と偏微分

関数 \(y = f(x)\) は、ある1つの変数 \(x\) とそこから得られる値 \(y\) との間の関係を結びます。

この関数の利用用途は多岐に渡りますが、特に事象(現象)を数理的に記述するのには非常に便利です。

ただ、ある事象が何らか1つの要因によって決まるのなら変数は1つで問題ありませんが、一般には複数の要因が入り混じった複雑な関係となっていることが多いため、2つ以上の変数を与える必要があります。

これを数理的に記述したもの、すなわち多変数関数を導入していきましょう。

多変数関数

多変数関数の導入

多変数関数とは冒頭で説明した通り、2つ以上の変数をもった関数のことを言います。

一方で、単純な関数 \(y = f(x)\) は明示的に区別する際「1変数関数」と呼ぶこともあるので覚えておきましょう。

多変数関数を記号を用いて表現すると次のように書くことができます。

式(1)

\[ z = f(x_1, ~ x_2, ~ \cdots, ~ x_i, ~ \cdots, ~ x_n) ~~~ (~ 1 \leq i \leq n ~) \]

ここで変数 \(x_i ~~~ (~ 1 \leq i \leq n ~)\) は \(n\) 個あるため \(n\) 変数関数と呼ぶことができます。

そしてこれらの変数は互いに独立であることに注意する必要があります。

独立とは互いに影響を及ぼさないことを言いますが、例えば \(x_1\) に \(4\) を代入したからと言って、別の変数 \(x_2\) に代入可能な値が \(2 x_1\)、すなわち \(8\) に限定されるなどと言った制限は設けられないということです。

つまり、私達が \(n\) 変数関数を取り扱う際には \(n\) 個すべての変数に代入する値を用意する必要があります。

すべての変数に値が代入されたら、その成果として関数から \(z\) という値を得ることができるのですね。

ただ、上記のような手に負えないほど多くの変数をもった関数は必要になったときに考えればいいので、以降の項では2変数の関数を基にして話を展開していくことにします。

多変数関数のグラフ

1変数関数は座標上にグラフとして表現することが可能でした。

多変数関数でもグラフを描画することは可能ですが、1変数関数のように平面に描くことはできません。

2変数関数を考えると互いに独立な変数として \(x\) と \(y\) の2つを持ち、これらを決定して初めて関数は結果として \(z\) を返すのでした。

つまり、必要な情報は \(x\), \(y\) そして \(z\) の3つであることになります。

これはグラフが3次元空間中に描画されることを意味しています。

実際に \(z = x^2 + y^2\) を例にグラフを描画した結果を示しましょう。

多変数関数のグラフ

図で示したように2変数関数では曲面としてグラフが描けることが理解できます。

ということは、3変数関数 \(w = f(x, ~ y, ~ z)\) となると4つの軸が必要であることになるので、もやは視覚的には表現することができないということになります。

※陰関数 \(f(x, ~ y, ~ z) = 0\) の場合は \(x\), \(y\), \(z\) のうちどれか1つがその他2つと従属関係にあることになるので曲面として3次元空間内にグラフを描くことが可能です。

ここでは脱線してしまうために詳細には取り上げませんが、例えば3変数関数では空間中のある位置 \((x, ~ y, ~ z)\) における「温度・気温 \(T (x, ~ y, ~ z)\) 」や「流体の密度 \(\rho (x, ~ y, ~ z)\) 」などの表現によく利用されます。

更に4変数関数になると、空間を表す \(x\), \(y\), \(z\) と時間を表す \(t\) を合わせた関数 \(f(x, ~ y, ~ z, ~ t)\) を扱うことが多く、「時間変化する」温度・気温や流体の密度などを表現する際に見かけることになるでしょう。

このように多変数の関数は視覚的に理解できなくとも物理的な意味や情報量としての意味に落とし込めば理解に苦しむことは少なくなるのです。

詳細に関しては、それぞれ個別具体的な話になってから行うことにするので、筆者の説明が悪く理解が困難であったとしても現状問題ありません。

偏微分

1変数関数 \(y = f(x)\) の微分は \(x\) で微分することによって、その導関数 \(\frac{dy}{dx} = \frac{df(x)}{dx}\) を得ることができます。

そして幾何学的にはグラフの接線の傾きを意味することも「微分法の基礎」で触れているとおりです。

同様にグラフの傾きという観点から見れば、2変数関数 \(z = f(x, ~ y)\) のグラフ上のある点に着目して接線を引こうとした場合、その接線は無限に存在するため傾きは一意には定まらない事になります。

そこで、\(x\) 軸方向および \(y\) 軸方向に限定して接線を引いてみることを考えてみましょう。

x軸方向とy軸方向についての偏微分

図のように曲面上のある点について2本の接線が引けますが、これを数学的に微分操作として定義する必要があります。

そのために、まずは1変数関数に関する微分の定義式を思い出してもらいましょう。

1変数関数の微分の定義

\[ \frac{df(x)}{dx} = \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{f(x + \Delta x) - f(x)}{\Delta x} \]

この定義式に倣って、2変数関数における微分についても考えていけば良さそうです。

注意しなければならない違いは変数の数が1つではないことですが、

その点については、先程の述べた通り接線の方向を \(x\) 軸方向および \(y\) 軸方向へ限定していることから、それぞれの接線についてどちらか一方の変数の影響を無視することができるのです。

直前で示したグラフを見ていただければ \(x\) 軸方向に沿った接線は \(y\) の値は常に一定であり、他方で \(y\) 軸方向に沿った接線は \(x\) の値が常に一定という状況にあります。

つまり繰り返しになりますが、\(x\) 軸方向に沿った接線について変数は \(x\) のみで \(y\) は定数(固定値)として扱え、他方で \(y\) 軸方向に沿った接線について変数は \(y\) のみで \(x\) は定数として扱えるということです。

以上を踏まえて多変数関数の定義式を次のように記述するようにします。

式(2) : 多変数関数の微分の定義

\[ \begin{align*} \left(\frac{\partial f(x, ~ y)}{\partial x}\right)_y = \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{f(x + \Delta x, ~ y) - f(x, ~ y)}{\Delta x} \\[20pt] \left(\frac{\partial f(x, ~ y)}{\partial y}\right)_x = \lim_{\Delta y \rightarrow 0} \frac{f(x, ~ y + \Delta y) - f(x, ~ y)}{\Delta y} \end{align*} \]

多変数関数の微分と表現していますが、一般的には偏微分と表現します。

そして式(2)の左辺のことを偏導関数、またここへ \((x, ~ y) = (a, ~ b)\) を代入したものは偏微分係数と言います。

記号に関する説明ですが、式(2)左辺の記号右下にはどの変数を固定しているのかを表しています。

加えて、\(\partial\) は1変数関数の微分とは異なることを明らかにするために利用しています。

読み方としては「ラウンド」「デル」「パーシャル」などが散見されますが、分かれば問題ないでしょう。

以上の内容は、特に断りもなく2変数関数を題材に展開してきましたが、一般に \(n\) 変数関数の場合であっても同様に考えることができます。

式(3)

\[ \frac{\partial f(x_1, ~ x_2, ~ \cdots , ~ x_i, ~ \cdots , ~ x_n)}{\partial x_i} = \lim_{\Delta x_i \rightarrow 0} \frac{f(x_1, ~ x_2, ~ \cdots , ~ x_i + \Delta x_i, ~ \cdots , ~ x_n) - f(x_1, ~ x_2, ~ \cdots , ~ x_i, ~ \cdots , ~ x_n)}{\Delta x_i} \]

しかし変数が多いと少し記述も面倒になるので、すべての変数を一纏めにしたものとして、集合表現 \(\{x_i\}\) やベクトル表現 \(\boldsymbol{x} = (x_1, ~ x_2, ~ \cdots , ~ x_n)\) を用いて表現することもあります。

多変数関数の偏微分の表現方法

\[ \frac{\partial f(\{x_i\})}{\partial x_i}, ~~~ \frac{\partial f(\boldsymbol{x})}{\partial x_i} \]

ちなみに筆者はベクトル表現を好んで利用しています。

多変数関数の合成微分

1変数関数 \(f(x)\) がもつ変数 \(x\) が実は別の変数(仮に \(t\) とする)にも依存している場合、次に示す合成微分の公式が成立します。

1変数関数の合成微分

\[ \frac{df(x)}{dt} = \frac{df(x)}{dx} \cdot \frac{dx}{dt} \]

※1変数関数に関する合成微分法についてはこちらのページで解説しています。

以下では多変数関数 \(f\) について、\(f\) の変数が別の変数 \(t\) に依存している場合の合成微分公式を導いてみることにします。

例によってまずは2変数関数を基にして考えてみましょう。

ある2変数関数 \(f(x, ~ y)\) は、それぞれの独立変数 \(x\) および \(y\) が実は \(t\) という変数によって変化するので数学的には次のように記述できます。

式(4)

\[ f\left(x(t), ~ y(t)\right) \equiv F(t) \]

また変数 \(x\), \(y\) が \(t\) のみで書き表すことができることから、実質 \(f\) は \(t\) のみに依存した1変数関数とみなすことも可能で、それを改めて \(F(t)\) と置いてみることにします。

つまり、今求めようとしている関数 \(f(x(t), ~ y(t))\) の \(t\) 微分は、\(\partial\) ではなく \(d\) を利用して記述すれば良いということになります。

式(5)

\[ \frac{df(x(t), ~ y(t))}{dt} = \frac{dF(t)}{dt} \]

更に式(5)の右辺に対して、1変数関数の微分の定義式を適用すれば次のように書き換えることが可能です。

式(6)

\[ \begin{align*} & \frac{dF(t)}{dt} = \lim_{\Delta t \rightarrow 0} \frac{F(t + \Delta t) - F(t)}{\Delta t} \\[20pt] \Leftrightarrow ~ & \frac{df\left(x(t), ~ y(t)\right)}{dt} = \lim_{\Delta t \rightarrow 0} \frac{f\left(x(t + \Delta t), ~ y(t + \Delta t)\right) - f\left(x(t), ~ y(t)\right)}{\Delta t} \end{align*} \]

ここからの計算は、ほんの少しテクニカルではあるのですがよく使う手法であるためにここでご紹介しておくことにします。

具体的には、式(6)右辺の分子を次のような細工を施すのです。

式(7)

\[ \frac{df\left(x(t), ~ y(t)\right)}{dt} = \lim_{\Delta t \rightarrow 0} \frac{f\left(x(t + \Delta t), ~ y(t + \Delta t)\right) \textcolor{red}{- f\left(x(t), ~ y(t + \Delta t)\right) + f\left(x(t), ~ y(t + \Delta t)\right)} - f\left(x(t), ~ y(t)\right)}{\Delta t} \]

式(7)の赤色で示した部分は合計で0になるので、この様な式変形を行っても問題はありません。

ここからどのようにするかと言うと、それぞれ2つのパーツに分けていきます。

式(8)

\[ \begin{align*} \frac{df\left(x(t), ~ y(t)\right)}{dt} &= \lim_{\Delta t \rightarrow 0} \left\{\frac{f\left(x(t + \Delta t), ~ y(t + \Delta t)\right) - f\left(x(t), ~ y(t + \Delta t)\right) }{\Delta t} + \frac{f\left(x(t), ~ y(t + \Delta t)\right) - f\left(x(t), ~ y(t)\right)}{\Delta t} \right\} \\[20pt] &= \lim_{\Delta t \rightarrow 0} \frac{f\left(\textcolor{red}{x(t + \Delta t)}, ~ y(t + \Delta t)\right) - f\left(\textcolor{red}{x(t)}, ~ y(t + \Delta t)\right) }{\Delta t} + \lim_{\Delta t \rightarrow 0} \frac{f\left(x(t), ~ \textcolor{red}{y(t + \Delta t)}\right) - f\left(x(t), ~ \textcolor{red}{y(t)}\right)}{\Delta t} \end{align*} \]

式(8)の2行目には赤色で示している箇所がありますが、よく観察してみると第1項目の分子は \(x\) だけが変化しており、他方第2項目の分子は \(y\) だけが変化していることが分かります。

これを手がかりに次のように式変形することによって最終結果に到達することができます。

式(9)

\[ \begin{align*} \frac{df\left(x(t), ~ y(t)\right)}{dt} &= \lim_{\Delta t \rightarrow 0} \left\{ \frac{f\left(\textcolor{red}{x(t + \Delta t)}, ~ y(t + \Delta t)\right) - f\left(\textcolor{red}{x(t)}, ~ y(t + \Delta t)\right) }{\Delta x} \cdot \frac{\Delta x}{\Delta t} \right\} + \lim_{\Delta t \rightarrow 0} \left\{ \frac{f\left(x(t), ~ \textcolor{red}{y(t + \Delta t)}\right) - f\left(x(t), ~ \textcolor{red}{y(t)}\right)}{\Delta y} \cdot \frac{\Delta y}{\Delta t} \right\}\\[20pt] &= \lim_{\textcolor{red}{\Delta x \rightarrow 0}} \frac{f\left(x(t + \Delta t), ~ y(t + \Delta t)\right) - f\left(x(t), ~ y(t + \Delta t)\right) }{\Delta x} \cdot \lim_{\Delta t \rightarrow 0}\frac{\Delta x}{\Delta t} + \lim_{\textcolor{red}{\Delta y \rightarrow 0}} \frac{f\left(x(t), ~ y(t + \Delta t)\right) - f\left(x(t), ~ y(t)\right)}{\Delta y} \cdot \lim_{\Delta t \rightarrow 0} \frac{\Delta y}{\Delta t} \\[20pt] &= \frac{\partial f(x, ~ y)}{\partial x} \cdot \frac{dx}{dt} + \frac{\partial f(x, ~ y)}{\partial y} \cdot \frac{dy}{dt} \end{align*} \]

式(9)の2行目では \(\Delta t \rightarrow 0\) から \(\Delta x, \Delta y \rightarrow 0\) に置き換えていることに注意しましょう。

※この置き換えは1変数関数の場合で詳細を説明していますので参考にしてみてください。

そして着目すべきは、式(9)の3行目で各項それぞれ極限をとることによって \(x\), \(y\) の偏微分 \(\partial\) に置き換えた点です。

また、\(x\) および \(y\) はもともと \(t\) のみに依存しているので、微分 \(d\) で表現していることについては問題ないでしょう。

もちろん極限操作を行う際に極限値が存在することは検証する必要はありますが、ここでは微分不可能である都合の悪い関数については考えないことにしていますので現状問題ありません。

式(9)について非常に興味深いのは、微分で表現された2つの項の和で表現されることです。

この特徴は3変数以上になっても引き継がれて、一般に \(n\) 変数関数 \(f\left(\boldsymbol{x}(t)\right)\) の \(t\) 微分は次式のように和で表現することが可能です。 式() \[ \left\{ \begin{align*} & ~ \frac{f\left(\boldsymbol{x}(t)\right)}{dt} = \sum_{i = 1}^n \frac{\partial f\left(\boldsymbol{x}\right)}{\partial x_i} \frac{dx_i(t)}{dt} \\[20pt] & ~ \boldsymbol{x}(t) = (x_1(t), ~ x_2(t), ~ \cdots, ~ x_i(t), ~ \cdots, ~ x_n(t)) \end{align*} \right. \]

多変数関数のテイラー展開

関数を近似して簡単な扱いができるなら、この上なく嬉しいことは「テイラー展開」のページで説明した通りです。

テイラー展開とは、任意の関数を冪級数で展開するという重要な解析手法のことを言います。

そして前節までに説明してきた多変数関数に関しても、テイラー展開によって簡単に扱えるようにしておくと今後の展開がスムーズに行うことができます。

復習しておくと、1変数関数のテイラー展開は次の式で与えられます。

1変数関数のテイラー級数展開

\[ f(x) = \sum_{n = 0}^\infty \frac{1}{n!}\frac{d^n f(a)}{dx^n} (x - a)^n \]

式の意味を軽く説明しておくと、\(x = a\) 周辺(付近)について関数 \(f(x)\) を冪関数の和で表現することができることを言っています。

注意しなければならないのは、一般に \(x = a\) 周辺でしか成立しないことで、この点から遠くに離れてしまうと良い近似を与えてくれません。

なぜなら、\((x - a)^n\) が \(\infty\) に発散してしまう恐れがあるためです。

※別のコンテンツ「テイラー展開」でも説明している通り、実際に近似を与えてくれる \(x\) の範囲は上記の説明の限りではありません。また、範囲が拡張された収束条件として「収束半径(作成中)」を参考にしてください。

以上のことに注意して、早速テイラー展開がどの様に表現されるのか導出していきたいと思いますが、1変数関数のときのように丁寧には行わず一気に進めたいと思います。

まずは \(x\) を無視して、\(y\) について \(y = b\) 周辺でテイラー展開を行います。

式(10)

\[ \begin{align*} f(x, ~ y) &= \sum_{n = 0}^\infty \frac{1}{n!} \frac{\partial^n f(x, ~ b)}{\partial y^n} (y - b)^n \\[20pt] &= f(x, ~ b) + \frac{\partial f(x, ~ b)}{\partial y} (y - b) + \frac{1}{2!}\frac{\partial^2 f(x, ~ b)}{\partial y^2} (y - b)^2 + \cdots \end{align*} \]

式(10)で表現しているように偏微分を用いて冪級数展開し、何も施していない \(x\) はそのまま残っています。

続いて \(x\) について偏微分を利用して \(f(x, ~ b)\) を冪級数展開してみましょう。

式(11)

\[ f(x, ~ b) = \sum_{m = 0}^\infty \frac{1}{m!} \frac{\partial^m f(a, ~ b)}{\partial x^m} (x - a)^m \]

これである程度準備はできました。

しかし、ここで得られた式(11)を式(10)の \(f(x, ~ b)\) にそのまま代入することはできません。

例えば式(10)の第2項目に当たる1階 \(y\) 偏微分に関して、式(11)で置き換えた次の式を見てください。

誤り

\[ \frac{\partial f(x, ~ b)}{\partial y} \mathrel{\char`≠} \frac{\partial}{\partial y} \left\{ \sum_{m = 0}^\infty \frac{1}{m!} \frac{\partial^m f(a, ~ b)}{\partial x^m} (x - a)^m \right\} \]

右辺の中括弧内には \(y\) が存在しないために \(y\) で偏微分を実行すると0となってしまいます。

丁寧に \(\frac{\partial f(x, ~ b)}{\partial y} \equiv G(x, ~ b)\) と置いて調べてみると、上記の計算が誤りであることが分かるでしょう。

つまり、改めて置き直した \(G(x, ~ b)\) を \(x\) に関して \(x = a\) 周辺でテイラー展開を行うのです。

式(12)

\[ \begin{align*} G(x, ~ b) &= \sum_{m = 0}^\infty \frac{1}{m!} \frac{\partial^m}{\partial x^m} G(a, ~ b) (x - a)^m \\[20pt] \Leftrightarrow ~ \frac{\partial f(x, ~ b)}{\partial y} &= \sum_{m = 0}^\infty \frac{1}{m!} \frac{\partial^m}{\partial x^m} \frac{\partial f(a, ~ b)}{\partial y} (x - a)^m \\[20pt] &= \sum_{m = 0}^\infty \frac{1}{m!} \frac{\partial^{m + 1} f(a, ~ b)}{\partial x^m \partial y} (x - a)^m \end{align*} \]

先程の誤った表式とはことなり、\(\frac{\partial}{\partial y}\) が関数 \(f\) に直接掛かっていますね。

この式(12)を参考にすれば、一般に \(n\) 階偏微分の表式を示すと次のようになることが分かります。

式(13)

\[ \frac{\partial^n f(x, ~ b)}{\partial y^n} = \sum_{m = 0}^\infty \frac{1}{m!} \frac{\partial^{m + n} f(a, ~ b)}{\partial x^m \partial y^n} (x - a)^m \]

したがって式(13)から式(10)を書き換えれば次のようになるのことが分かります。

式(14)

\[ \begin{align*} f(x, ~ y) &= \left\{ \sum_{m = 0}^\infty \frac{1}{m!} \frac{\partial^m f(a, ~ b)}{\partial x^m} (x - a)^m \right\} + \left\{ \sum_{m = 0}^\infty \frac{1}{m!} \frac{\partial^{m + 1} f(a, ~ b)}{\partial x^m \partial y} (x - a)^m \right\} (y - b) + \frac{1}{2!} \left\{ \sum_{m = 0}^\infty \frac{1}{m!} \frac{\partial^{m + 2} f(a, ~ b)}{\partial x^m \partial y^2} (x - a)^m \right\} (y - b)^2 + \cdots \\[20pt] &= \sum_{n = 0}^\infty \frac{1}{n!} \left\{ \sum_{m = 0}^\infty \frac{1}{m!} \frac{\partial^{m + n} f(a, ~ b)}{\partial x^m \partial y^n} (x - a)^m \right\} (y - b)^n \\[20pt] &= \sum_{m = 0}^\infty \sum_{n = 0}^\infty \frac{1}{m!n!} \frac{\partial^{m + n} f(a, ~ b)}{\partial x^m \partial y^n} (x - a)^m (y - b)^n \end{align*} \]

和の記号が複数あって複雑なので、もう少し整理してみましょう。

式(14)の1行目をそれぞれ展開したものを次に示しました。

式(15)

\[ \begin{align*} f(x, ~ y) &= \{ \textcolor{red}{f(a, ~ b)} &&+ \textcolor{orange}{\frac{\partial f(a, ~ b)}{\partial x} (x - a)} &&+ \textcolor{green}{\frac{1}{2!} \frac{\partial^2 f(a, ~ b)}{\partial x^2} (x - a)^2} &&+ \textcolor{blue}{\frac{1}{3!} \frac{\partial^3 f(a, ~ b)}{\partial x^3} (x - a)^3} &&+ \cdots \} \\[12pt] &+ \{ \textcolor{orange}{\frac{\partial f(a, ~ b)}{\partial y} (y - b)} &&+ \textcolor{green}{\frac{\partial^2 f(a, ~ b)}{\partial x \partial y} (x - a) (y - b)} &&+ \textcolor{blue}{\frac{1}{2!} \frac{\partial^3 f(a, ~ b)}{\partial x^2 \partial y} (x - a)^2 (y - b)} &&+ \cdots \} \\[12pt] &+ \{ \textcolor{green}{\frac{1}{2!} \frac{\partial^2 f(a, ~ b)}{\partial y^2} (y - b)^2} &&+ \textcolor{blue}{\frac{1}{2!} \frac{\partial^3 f(a, ~ b)}{\partial x \partial y^2} (x - a) (y - b)^2} &&+ \cdots \} \\[12pt] &+ \{ \textcolor{blue}{\frac{1}{3!} \frac{\partial^3 f(a, ~ b)}{\partial y^3} (y - b)^3} &&+ \cdots \} \\[12pt] &+ \cdots \end{align*} \]

式中では微分の階数が等しい項に同じ色をつけていて、これらをまとめ上げると次のように整理されます。

式(16)

\[ \begin{align*} f(x, ~ y) &= \textcolor{red}{f(a, ~ b)} \\[12pt] & ~~~~~ + \left\{ \textcolor{orange}{ \frac{\partial f(a, ~ b)}{\partial x} (x - a) + \frac{\partial f(a, ~ b)}{\partial y} (y - b)} \right\} \\[12pt] & ~~~~~ + \left\{ \textcolor{green}{ \frac{1}{2!} \frac{\partial^2 f(a, ~ b)}{\partial x^2} (x - a)^2 + \frac{\partial^2 f(a, ~ b)}{\partial x \partial y} (x - a) (y - b) + \frac{1}{2!} \frac{\partial^2 f(a, ~ b)}{\partial y^2} (y - b)^2} \right\} \\[12pt] & ~~~~~ + \left\{ \textcolor{blue}{ \frac{1}{3!} \frac{\partial^3 f(a, ~ b)}{\partial x^3} (x - a)^3 + \frac{1}{2!} \frac{\partial^3 f(a, ~ b)}{\partial x^2 \partial y} (x - a)^2 (y - b) + \frac{1}{2!} \frac{\partial^3 f(a, ~ b)}{\partial x \partial y^2} (x - a) (y - b)^2 + \frac{1}{3!} \frac{\partial^3 f(a, ~ b)}{\partial y^3} (y - b)^3} \right\} \\[12pt] & ~~~~~ + \cdots \\[20pt] &= \textcolor{red}{f(a, ~ b)} \\[12pt] & ~~~~~ + \left\{ \textcolor{orange}{(x - a) \frac{\partial}{\partial x} + (y - b) \frac{\partial}{\partial y}} \right\} f(a, ~ b) \\[12pt] & ~~~~~ + \textcolor{green}{\frac{1}{2!}} \left\{ \textcolor{green}{(x - a)^2 \frac{\partial^2}{\partial x^2} + 2! (x - a) (y - b) \frac{\partial^2}{\partial x \partial y} + (y - b)^2 \frac{\partial^2}{\partial y^2}} \right\} f(a, ~ b) \\[12pt] & ~~~~~ + \textcolor{blue}{\frac{1}{3!}} \left\{ \textcolor{blue}{\frac{\partial^3}{\partial x^3} (x - a)^3 + \frac{3!}{2!} \frac{\partial^3}{\partial x^2 \partial y} (x - a)^2 (y - b) + \frac{3!}{2!} \frac{\partial^3}{\partial x \partial y^2} (x - a) (y - b)^2 + \frac{\partial^3}{\partial y^3} (y - b)^3} \right\} f(a, ~ b) \\[12pt] & ~~~~~ + \cdots \\[20pt] &= \textcolor{red}{\left\{ (x - a)\frac{\partial}{\partial x} + (y - b)\frac{\partial}{\partial y} \right\}^0} f(a, ~ b) + \textcolor{orange}{\left\{ (x - a)\frac{\partial}{\partial x} + (y - b)\frac{\partial}{\partial y} \right\}^1} f(a, ~ b) + \textcolor{green}{\frac{1}{2!} \left\{ (x - a)\frac{\partial}{\partial x} + (y - b)\frac{\partial}{\partial y} \right\}^2} f(a, ~ b) + \textcolor{blue}{\frac{1}{3!} \left\{ (x - a)\frac{\partial}{\partial x} + (y - b)\frac{\partial}{\partial y} \right\}^3} f(a, ~ b) + \cdots \\[20pt] &= \sum_{k = 0}^\infty \frac{1}{k!} \left\{ (x - a)\frac{\partial}{\partial x} + (y - b)\frac{\partial}{\partial y} \right\}^k f(a, ~ b) \end{align*} \]

ここで、本来であれば数学的帰納法を利用して第 \(k\) 項も成立することを示す必要がありますが、ここでは省略するので各自で確認してみてください。

この結果より、2変数関数のテイラー1次近似は

式(17)

\[ f(x, ~ y) \simeq f(a, ~ b) + \frac{\partial f(a, ~ b)}{\partial x} (x - a) + \frac{\partial f(a, ~ b)}{\partial y} (y - b) \]

と表せば良いでしょう。

1変数関数のテイラー1次近似は、グラフの一部を直線として表現することを意味していました。

式(17)も同様に考えれば曲面の一部分を表しているのだろうと思われますが、以降の内容は「全微分」に譲って当コンテンツはここで終了とさせていただきます。

※ちなみに上記の内容が理解できれば、3変数以上の関数についてもテイラー展開式を導出することができます。一般に \(n\) 変数関数の場合のテイラー展開は次のように与えられます。

\(n\) 変数関数のテイラー級数展開

\[ \left\{ \begin{align*} & ~ f(\boldsymbol{x}) = \sum_{k = 0}^\infty \frac{1}{k!} \left\{ \sum_{i = 1}^n (x_i - a_i) \frac{\partial}{\partial x_i} \right\}^k f(\boldsymbol{a}) \\[20pt] & ~ \boldsymbol{x} = (x_1, ~ x_2, ~ \cdots, ~ x_i, ~ \cdots, ~ x_n) \\[10pt] \end{align*} \right. \]

ここで、\(\boldsymbol{a}\) とは \(x_i = a_i ~ (~ 1 \leq i \leq n ~)\) を成分にもったベクトル(値のセット)を表しています。

【サイト運営 : だいご】

今年で物理化学歴11年目になります。

大学入試2次数学でたった3割しか得点できなかったいわゆる数弱落ちこぼれ。それでも好きこそものの上手なれと言ったところか、学会で最優秀賞受賞したり首席卒業できてしまったので、役に立つ知識を当サイトに全て惜しみなく公開しようと思います。ブックマークをオススメ。

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