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【ボルツマンの原理】
統計力学でのエントロピーの記述

ボルツマンの原理「 \(S = k_\text{B} \ln w\) 」これは統計力学におけるエントロピーの記述です。

恐らく多くの方が、この関係式がどの様に導かれるのか…調べに調べた挙げ句全く見つからず、結局「そういうものだ」と無理やり納得してしまっているのではないでしょうか。

そのスッキリしない感情も今日でお別れ。当ページで筆者が編み出した史上最も簡単な導出法を知ることができます。

※同じ方法が紹介されている書籍などあれば、洗練させたいので紹介していただけると嬉しいです。

早速、順を追って解説していきます。

ボルツマンの原理を導出

統計力学では、系の微視的状態を場合の数 \(w\) で表し、\(\epsilon_i\) のエネルギーをもつ分子数を \(N_i\) としたとき \(w\) は

式(1)

\[ w = \frac{N!}{N_0! N_1! N_2! \cdots} = \frac{N!}{\prod_{i = 0}^r N_i!} \]

で与えられます。

ここで \(N\) は系の全分子数で \(N = \sum_{i = 0}^r N_i\) の関係を満たします。

式(1)の様に式中に階乗を含んだ状態での解析は具合が悪く、\(N\) が非常に大きな数値であるという前提で対数 \(\ln w\) を考えると簡単になるのでした。

実際に…

式(2)

\[ \begin{align*} \ln w &= N \ln N - \sum_{i = 0}^r N_i \ln N_i \\[15pt] &= - \sum_{i = 0}^r N_i \ln \frac{N_i}{N} \end{align*} \]

のように整理することができます。

式(1)から式(2)を得るにあたりスターリングの公式 \(\ln N! \simeq N \ln N - N\) を利用しました。

\(\ln w\) の最大最小問題を解くことによってボルツマン分布式を求めることができます。

ボルツマン分布式は次で与えられる関係で

式(3) : ボルツマン分布

\[ \frac{N_i}{N_j} = e^{-\beta (\epsilon_i - \epsilon_j)} ~~~ \left( ~ \beta = \frac{1}{k_\text{B}T} ~ \right) \]

\(\epsilon_i\) および \(\epsilon_j\) のエネルギーをもつ分子数の比を知ることができます。また \(\beta\) は逆温度で具体的には \(\frac{1}{k_\text{B}T}\) で表されます。

また式(3)は次のように変形することで \(\epsilon_i\) のエネルギーをもつ分子が全体の何割を占めるかを表す確率分布 \(\frac{N_i}{N}\) が求められます。

式(4)

\[ \begin{gather*} N_i e^{\beta (\epsilon_i - \epsilon_j)} = N_j \\[15pt] \sum_{j = 0}^r N_i e^{\beta (\epsilon_i - \epsilon_j)} = \sum_{j = 0}^r N_j \\[15pt] N_i e^{\beta \epsilon_i} \sum_{j = 0}^r e^{-\beta \epsilon_j} = N \\[15pt] \therefore ~ \frac{N_i}{N} = \frac{e^{-\beta \epsilon_i}}{\displaystyle \sum_{j = 0}^r e^{-\beta \epsilon_j}} \end{gather*} \]

以降、可読性を考慮して \(z\) という量を次のように定めることにします。

式(5)

\[ z \equiv \sum_{j = 0}^r e^{-\beta \epsilon_j} \]

すると式(6)は次のようになります。

式(6)

\[ \frac{N_i}{N} = \frac{e^{-\beta \epsilon_i}}{z} \]

確率分布式(6)を求めたのは、式(2)にちょうど \(\frac{N_i}{N}\) を含むためです。

実際に式(6)を式(2)に代入して計算すると、次式を得ることができます。

式(7)

\[ \begin{align*} \ln w &= -\sum_{i = 0}^r N_i \big( \ln e^{-\beta \epsilon_i} - \ln z \big) \\[15pt] &= \beta \sum_{i = 0}^r N_i \epsilon_i + N \ln z \\[20pt] &= \beta E + N \ln z \end{align*} \]

ここからは系の総エネルギー \(E\) に着目していきます。

エネルギー \(E\) は \(\epsilon_i\) のエネルギーを持つ分子の数 \(N_i\) を用いて次のように与えられます。

式(8)

\[ E = \sum_{i = 0}^r N_i \epsilon_i \]

また1分子あたりのエネルギー期待値 \(\bar{\epsilon}\) はエネルギー \(\epsilon_i\) と確率分布 \(\frac{N_i}{N}\) の積を考えて全体の和を計算すれば良いので

式(9)

\[ \bar{\epsilon} = \sum_{i = 0}^r \epsilon_i \frac{N_i}{N} \]

のとおりであり、更に式(8)と組み合わせると

式(10)

\[ \bar{\epsilon} = \sum_{i = 0}^r \epsilon_i \frac{N_i}{N} = \frac{E}{N} \]

の関係が成立していることが分かります。

式(10)に確率分布式(6) \(\frac{N_i}{N}\) を代入して計算を進めると次式が得られます。

式(11)

\[ \frac{E}{N} = \frac{\displaystyle \sum_{i = 0}^r \epsilon_i e^{-\beta \epsilon_i}}{z} \]

また式(11)右辺の分子に現れる和の項について、こちらは次に示すように関数 \(z\) を用いて書き直すことが可能です。

式(12)

\[ \sum_{i = 0}^r \epsilon_i e^{-\beta \epsilon_i} = -\frac{\partial}{\partial\beta} \sum_{i = 0}^r e^{-\beta \epsilon_i} = -\frac{\partial z}{\partial\beta} \]

したがって、式(11)は

式(13)

\[ \frac{E}{N} = -\frac{1}{z} \frac{\partial z}{\partial\beta} = -\frac{\partial \ln z }{\partial \beta} \]

となります。

※式(13)では \(d \ln x = \frac{dx}{x}\) の関係を利用しています。
\[ d \ln x = \frac{d \ln x}{dx} \cdot dx = \frac{1}{x} \cdot dx \]
とすれば容易に理解できます。

微視的状態 \(\ln w\) に焦点を戻します。

先程得られた式(13)を用いて、一気に目的の式 \(S = k_\text{B} \ln w\) を導いていきます。

そのために 式(7)を逆温度 \(\beta\) で偏微分していくのですが、このときエネルギー \(E\) が温度に依存することに注意して計算すると

式(14)

\[ \begin{align*} \text{eq(7) : } ~~~~~ \ln w &= \beta E + N \ln z \\[15pt] \frac{\partial \ln w }{\partial \beta} &= E + \beta \frac{\partial E}{\partial \beta} + N \frac{\partial \ln z}{\partial \beta} \end{align*} \]

また、式(13)からは

式(15)

\[ E + N \frac{\partial \ln z}{\partial \beta} = 0 \]

の関係が成立しているので、式(14)に適用すれば

式(16)

\[ \begin{gather*} \frac{\partial \ln w }{\partial \beta} = \beta \frac{\partial E}{\partial \beta} \\[15pt] \Rightarrow ~ d \ln w = \beta dE \\[15pt] d \ln w = \frac{1}{k_\text{B}} \frac{dE}{T} \end{gather*} \]

となります。式展開の最後で \(\beta = \frac{1}{k_\text{B}T}\) を利用しました。

最後に系の体積が一定の場合、系の総エネルギー変化 \(dE\) は外から吸収する熱量 \(\delta Q\) に等しいという熱力学第一法則に従えば、式(16)は

式(17)

\[ d \ln w = \frac{1}{k_\text{B}} \frac{\delta Q}{T} = \frac{dS}{k_\text{B}} \]

となって、直ちに次の通り ボルツマンの原理 を導くことができます。

式(18)

\[ S = k_\text{B} \ln w \]

上述の内容は、エネルギー準位が縮退していたとしても成立します。ぜひ計算して確認をしてみて下さい。

ボルツマンの原理の興味深い点は、ミクロな量である微視的状態の数 \(w\) とマクロな熱力学量であるエントロピーの関係が明らかであることです。

よくエントロピーは「乱雑さ」を表すと言われますが、それはつまり微視的状態の数の多さのことを示しています。

この解釈は統計力学あってこそで、熱力学的に定義されるエントロピーでは明かされた無かった重要な内容です。

【サイト運営 : だいご】

今年で物理化学歴11年目になります。

大学入試2次数学でたった3割しか得点できなかったいわゆる数弱落ちこぼれ。それでも好きこそものの上手なれと言ったところか、学会で最優秀賞受賞したり首席卒業できてしまったので、役に立つ知識を当サイトに全て惜しみなく公開しようと思います。ブックマークをオススメ。

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